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弁理士新池義明が学んだこと・気づいたことを記載します。
2023年4月1日土曜日
Cap Cut Proの解約方法
質問:Cap Cut Proを契約しました。月額1,200円です。解約したいのですが、その方法がわかりません。わかる方がおれれましたら教えてください。
模範解答:
動画で生かせる話し方Labo 清水明華
キャップカットの解約手順は、以下の手順を参考にしてください。
(1) iPhoneの「設定」アプリを開き、「iTunes StoreとApp Store」を選択。
Apple IDをタップし、「Apple IDを表示」をタップ。
「定期購入」をタップし、解約したいアイテムを選択。
「解約」をタップ。
(2) キャップカットの公式サイトにアクセスして行う方法
ログインし、「設定」をクリック。
「支払い情報」から「定期支払い」をクリック。
「解約」をクリック。
もしそれでもダメなら、
(1) Cap Cutのサポートチームにお問い合わせする。
(2) サブスクリプションの確認メールがApple から届きます。
「料金が請求されないようにするには、遅くとも各更新日の1日前までにキャンセルする必要があります。詳細およびキャンセルについては、サブスクリプションについてご確認ください。」
の指示に従って解約する。
2023年1月6日金曜日
国際出願翻訳文提出書に記載する出願番号を間違えた!
外国語でされた国際特許出願の翻訳文は、翻訳文提出特例期間内に翻訳文を提出することができます(特許法184の9第1項)。この提出書には、出願を特定するために出願番号を記載します。ところが、以前提出したフォームを使用したので、そのときの出願番号のままで提出してしまいました。どうするNEWPON!
具体的には、締め切りの数ヶ月後に特許庁から「却下理由通知書(中間書類) 」が届き、代理人は愕然とします。弁理士保険で賄われると思うが、経験がないのでなんともいえません。弁理士保険は、クライアントに支払った後、事情を説明して請求します。例えば、数億円の支払いになったときにはどうするか?とても支払えません?
教訓:「出願番号・登録番号のチェックは基本!」
2019年4月19日金曜日
特許や商標登録出願の出願人について
ペンネーム、芸名、雅名等の変名や、 通称名で出願をすることはできません。
権利能力(権利の主体となることができる資格)を有していることが必要です。
したがって、出願人が自然人(個人)の場合、 氏名については戸籍上のものを願書に記載します。
個人事業者が、その屋号(○○商店) 等により出願することも認められていません。この場合、個人名義で出願をすることとなります。民法で定める「権利能力」を有することが必要です。
出願人について
(1) 権利能力(権利の主体となることができる資格)を有していること
① 自然人(個人)又は法人でなければなりません。
ⅰ 任意に組織された法人格のない団体は出願人となることができません。
ⅱ 出願人が自然人(個人)の場合には、氏名は戸籍上のものを記載します。ペンネーム、芸名、雅名等の変名や通称名をもって出願することはできません。
ⅲ 個人事業者が、屋号(○○商店)等をもって出願することは認められませんので、このような場合は個人名義で出願します。
ⅳ 出願人が法人の場合には、法人の名称は登記簿等に登記されている名称及び本店住所を正確に記載し、その代表者の氏名を併せて記載します。
② 日本国内に住所又は居所(法人にあっては営業所)を有しない外国人は、下記のいずれかの条件に該当する場合を除き、特許権及びその他の特許に関する権利を享有することができません。
ⅰ その者の属する国において、日本国民に対しその国民と同一の条件により特許権その他の特許に関する権利の享有を認めているとき(相互主義)
ⅱ その者の属する国において、日本国がその国民に対し特許権その他の特許に関する権利の享有を認める場合には日本国民に対しその国民と同一の条件により特許権その他の特許に関する権利の享有を認めることとしているとき(相互主義)
ⅲ 条約に別段の定めがあるとき(パリ条約(2、3条)、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(2、3条)又は二国間条約等によって認められる国民)
(2) 手続能力を有していること
① 未成年者及び成年被後見人並びに被保佐人(特7)
ⅰ 未成年者及び成年被後見人は、法定代理人(親権者、後見人等)によらなければ手続をすることができません。ただし、未成年者が独立して法律行為をすることができるときはこの限りではありません。未成年者は原則父母が共同で親権者となります(民法818(3))。
ⅱ 被保佐人が手続をする場合には、保佐人の同意を得なければなりません。
ⅲ 法定代理人が手続をする場合で、後見監督人があるときは、その同意を得なければなりません。
ⅳ これら手続能力のない者のした手続は、追認することができます(特16)。
② 在外者(特8(1))(日本国内に住所又は居所(法人にあっては営業所)を有しない者)
在外者は、特許管理人(日本国内に住所又は居所を有する代理人)によらなければ、手続をし、又は特許法若しくは同法に基づく命令の規定により行政庁のした処分を不服として訴を提起することができません。ただし、特許願(特許法第44条第1項の規定による特許出願の分割に係る新たな特許出願、同法第46条第1項又は第2項の規定による出願の変更に係る特許出願及び同法第46条の2第1項の規定による実用新案登録に基づく特許出願を除く。)、先の特許出願を参照する旨の特許出願における先の特許出願の認証謄本を提出する物件提出書及び欠落補完における優先権主張基礎出願の写しを提出する物件提出書の提出は除きます(特施令1、特施規4の4)。
(3) 特許を受ける権利を有していること
① 特許出願人がその発明について特許を受ける権利を有していないときは、当該出願は拒絶されます(特49⑦)。
② 特許を受ける権利は、移転することができます(特33(1))。
③ 特許出願前の特許を受ける権利の承継は、その承継人が特許出願をしなければ、第三者に対抗することができません(特34(1))。
④ 特許を受ける権利が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者と共同でなければ特許出願をすることができません(特38)。
⑤ 特許を受ける権利が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その持分を譲渡することができません(特33(3))。
権利能力(権利の主体となることができる資格)を有していることが必要です。
したがって、出願人が自然人(個人)の場合、 氏名については戸籍上のものを願書に記載します。
個人事業者が、その屋号(○○商店) 等により出願することも認められていません。この場合、個人名義で出願をすることとなります。民法で定める「権利能力」を有することが必要です。
出願人について
(1) 権利能力(権利の主体となることができる資格)を有していること
① 自然人(個人)又は法人でなければなりません。
ⅰ 任意に組織された法人格のない団体は出願人となることができません。
ⅱ 出願人が自然人(個人)の場合には、氏名は戸籍上のものを記載します。ペンネーム、芸名、雅名等の変名や通称名をもって出願することはできません。
ⅲ 個人事業者が、屋号(○○商店)等をもって出願することは認められませんので、このような場合は個人名義で出願します。
ⅳ 出願人が法人の場合には、法人の名称は登記簿等に登記されている名称及び本店住所を正確に記載し、その代表者の氏名を併せて記載します。
② 日本国内に住所又は居所(法人にあっては営業所)を有しない外国人は、下記のいずれかの条件に該当する場合を除き、特許権及びその他の特許に関する権利を享有することができません。
ⅰ その者の属する国において、日本国民に対しその国民と同一の条件により特許権その他の特許に関する権利の享有を認めているとき(相互主義)
ⅱ その者の属する国において、日本国がその国民に対し特許権その他の特許に関する権利の享有を認める場合には日本国民に対しその国民と同一の条件により特許権その他の特許に関する権利の享有を認めることとしているとき(相互主義)
ⅲ 条約に別段の定めがあるとき(パリ条約(2、3条)、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(2、3条)又は二国間条約等によって認められる国民)
(2) 手続能力を有していること
① 未成年者及び成年被後見人並びに被保佐人(特7)
ⅰ 未成年者及び成年被後見人は、法定代理人(親権者、後見人等)によらなければ手続をすることができません。ただし、未成年者が独立して法律行為をすることができるときはこの限りではありません。未成年者は原則父母が共同で親権者となります(民法818(3))。
ⅱ 被保佐人が手続をする場合には、保佐人の同意を得なければなりません。
ⅲ 法定代理人が手続をする場合で、後見監督人があるときは、その同意を得なければなりません。
ⅳ これら手続能力のない者のした手続は、追認することができます(特16)。
② 在外者(特8(1))(日本国内に住所又は居所(法人にあっては営業所)を有しない者)
在外者は、特許管理人(日本国内に住所又は居所を有する代理人)によらなければ、手続をし、又は特許法若しくは同法に基づく命令の規定により行政庁のした処分を不服として訴を提起することができません。ただし、特許願(特許法第44条第1項の規定による特許出願の分割に係る新たな特許出願、同法第46条第1項又は第2項の規定による出願の変更に係る特許出願及び同法第46条の2第1項の規定による実用新案登録に基づく特許出願を除く。)、先の特許出願を参照する旨の特許出願における先の特許出願の認証謄本を提出する物件提出書及び欠落補完における優先権主張基礎出願の写しを提出する物件提出書の提出は除きます(特施令1、特施規4の4)。
(3) 特許を受ける権利を有していること
① 特許出願人がその発明について特許を受ける権利を有していないときは、当該出願は拒絶されます(特49⑦)。
② 特許を受ける権利は、移転することができます(特33(1))。
③ 特許出願前の特許を受ける権利の承継は、その承継人が特許出願をしなければ、第三者に対抗することができません(特34(1))。
④ 特許を受ける権利が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者と共同でなければ特許出願をすることができません(特38)。
⑤ 特許を受ける権利が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その持分を譲渡することができません(特33(3))。
2019年1月13日日曜日
二段書き登録商標と使用商標の同一性 ブロマガ/BlogMaga
いわゆる二段書き登録商標の上段部分(「ブロマガ」)のみの使用は、当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標の使用には該当しないと判断された。
(1) Xは,次の商標(以下「本件商標」という。)の商標権者である
(3) 特許庁は,平成30年3月22日,「登録第5621414号商標の指定役務中,第42類「インターネット等の通信ネットワークにおけるホームページの設計・作成又は保守,インターネット等の通信ネットワークにおけるホームページの設計・作成又は保守に関するコンサルティング,インターネット等の通信ネットワークにおけるホームページの設計・作成又は保守に関する情報の提供,インターネット等の通信ネットワークにおける情報・サイト検索用の検索エンジンの提供,インターネット等の通信ネットワークを利用するためのコンピュータシステムの設計・作成又は保守に関するコンサルティング,インターネット等の通信ネットワークを利用するプログラムの設計・作成又は保守,コンピュータにおけるウィルスの検出・排除及び感染の防止・パスワードに基づくインターネット情報及びオンライン情報の盗用の防止並びにコンピュータにおけるハッカーの侵入の防止等の安全確保のためのコンピュータプログラムによる監視,インターネットサイトにおけるブログ検索用の検索エンジンの提供」についての商標登録を取り消す。」旨の審決(以下「本件審決」という。また,取消しに係る役務を「取消対象役務」という。)をし,出訴期間として90日を附加した。
(5) 本件審決の理由の要旨
控訴棄却。
(1) 平成28年4月30日当時,Xのウェブサイト(「FC2ブログ>ブロマガランキング」のページ)において,上部に,馬のようなマークの横に太字のゴシック体風の文字で「FC2」,「ブロマガ」の文字が並べて表示されていた。また,本文の最上部に「ブロマガランキング」と表示されていた。このウェブサイトのURLには「blomaga」という文字が含まれていた。上記ウェブサイトの中央部分には,「ブロマガランキング」の文字の下に,1位から順にブログのタイトルが列挙され,ウェブサイトの右側部分には,「ブロマガ検索」との表示の下に「月間ブロマガ」と「単体ブロマガ」を選択するボタン,「キーワード」,「ジャンル」,「価格」,「表示順」の入力ないし選択ウィンドウが配置され,最下段には「検索」ボタンが配置されていた。
(1)ア 本件商標は,前記第2の1(1)のとおり,ゴシック体風の「ブロマガ」の片仮名とセンチュリー体風の「BlogMaga」の欧文字を上下2段に配置した商標であり,上段と下段の間は文字の高さの半分程度の間隔があり,上段と下段のフォントの大きさは概ね同じで,上段より下段の方がやや横幅が大きく構成されている。
(2) Xの主張について
ウェブサイトにて使用されている標章「ブロマガ」が登録商標(本件商標)と社会通念上同一ではないと判断された。
知財高裁判 H30・12・20 H30(ケ)10103号 商標権審決取消請求事件
事実の概要
1 本件は,エフシーツーインク(原告X)が有する商標権について,株式会社ドワンゴ(被告Y)が商標法50条に基づき不使用取消審判請求をしたところ,特許庁が商標登録を取り消すとの審決をしたため,Xが審決の取消を求めた事案である。
2 事実の概要
(1) Xは,次の商標(以下「本件商標」という。)の商標権者である
登録番号 第5621414号
登録出願日 平成24年9月13日
設定登録日 平成25年10月11日
登録商標 ブロマガ/BlogMaga
指定商品(役務)
第42類 インターネット等の通信ネットワークにおけるホームページの設計・作成又は保守,インターネット等の通信ネットワークにおけるホームページの設計・作成又は保守に関するコンサルティング,インターネット等の通信ネットワークにおけるホームページの設計・作成又は保守に関する情報の提供,インターネット等の通信ネットワークにおける情報・サイト検索用の検索エンジンの提供,インターネット等の通信ネットワークを利用するためのコンピュータシステムの設計・作成又は保守に関するコンサルティング,インターネット等の通信ネットワークを利用するプログラムの設計・作成又は保守,コンピュータにおけるウィルスの検出・排除及び感染の防止・パスワードに基づくインターネット情報及びオンライン情報の盗用の防止並びにコンピュータにおけるハッカーの侵入の防止等の安全確保のためのコンピュータプログラムによる監視,インターネットサイトにおけるブログ検索用の検索エンジンの提供,インターネットにおけるブログのためのサーバーの記憶領域の貸与,ウェブログの運用管理のための電子計算機用プログラムの提供,ウェブログ上の電子掲示板用サーバの記憶領域の貸与及びこれに関する情報の提供,オンラインによるブログ作成用コンピュータプログラムの提供又はこれに関する情報の提供,インターネットホームページを閲覧するための電子計算機の貸与,インターネット上で利用者が交流するためのソーシャルネットワーキング用サーバコンピュータの記憶領域の貸与,インターネット上の情報を閲覧するためのコンピュータプログラムの提供,インターネット等の通信ネットワークにおいて利用可能な記憶装置の記憶領域の貸与
(なお,平成28年7月11日に,上記指定役務中,「ウェブログの運用管理のための電子計算機用プログラムの提供,オンラインによるブログ作成用コンピュータプログラムの提供,インターネット上の情報を閲覧するためのコンピュータプログラムの提供」についての登録を無効とする旨の審決の確定登録がされた。)
(2) Yは,本件商標の登録取消審判請求をし,特許庁は,これを取消2016-300722号事件として審理した。取消審判請求の登録日は平成28年10月31日である。
(3) 特許庁は,平成30年3月22日,「登録第5621414号商標の指定役務中,第42類「インターネット等の通信ネットワークにおけるホームページの設計・作成又は保守,インターネット等の通信ネットワークにおけるホームページの設計・作成又は保守に関するコンサルティング,インターネット等の通信ネットワークにおけるホームページの設計・作成又は保守に関する情報の提供,インターネット等の通信ネットワークにおける情報・サイト検索用の検索エンジンの提供,インターネット等の通信ネットワークを利用するためのコンピュータシステムの設計・作成又は保守に関するコンサルティング,インターネット等の通信ネットワークを利用するプログラムの設計・作成又は保守,コンピュータにおけるウィルスの検出・排除及び感染の防止・パスワードに基づくインターネット情報及びオンライン情報の盗用の防止並びにコンピュータにおけるハッカーの侵入の防止等の安全確保のためのコンピュータプログラムによる監視,インターネットサイトにおけるブログ検索用の検索エンジンの提供」についての商標登録を取り消す。」旨の審決(以下「本件審決」という。また,取消しに係る役務を「取消対象役務」という。)をし,出訴期間として90日を附加した。
(4) Xは,平成30年7月23日,本件審決の取消しを求めて本件訴訟を提起した。
(5) 本件審決の理由の要旨
Xの使用する,「ブロマガ」の文字からなる商標は,本件商標と社会通念上同一の商標とはいえず,商標法50条に規定する「登録商標」に当たらないし,また,Xは,上記Xの使用する商標を「インターネット検索エンジンの提供」などの取消対象役務に使用していないため,Xが,登録に係る登録商標を取消審判請求の登録前3年以内(以下「要証期間」という。)に取消対象役務について使用したことの証明がないから,本件商標の取消対象役務に係る登録は商標法50条により取り消されるべきである。
判 旨
控訴棄却。
本件の争点は、(1) 本件商標と使用標章が同一といえるか,(2) 本件商標を本件商標の登録にかかる役務について使用しているである。本判決は,商標が同一でなく,また,取消対象役務について使用していないとして,本件商標の商標登録を取り消すとした審決を維持した。
1 商標の使用について
(1) 平成28年4月30日当時,Xのウェブサイト(「FC2ブログ>ブロマガランキング」のページ)において,上部に,馬のようなマークの横に太字のゴシック体風の文字で「FC2」,「ブロマガ」の文字が並べて表示されていた。また,本文の最上部に「ブロマガランキング」と表示されていた。このウェブサイトのURLには「blomaga」という文字が含まれていた。上記ウェブサイトの中央部分には,「ブロマガランキング」の文字の下に,1位から順にブログのタイトルが列挙され,ウェブサイトの右側部分には,「ブロマガ検索」との表示の下に「月間ブロマガ」と「単体ブロマガ」を選択するボタン,「キーワード」,「ジャンル」,「価格」,「表示順」の入力ないし選択ウィンドウが配置され,最下段には「検索」ボタンが配置されていた。
上記ウェブサイトは,「ブロマガ」というサービスの対象である有料で閲覧できるブログ記事のランキングを示したものであり,「ブロマガ検索」は,「ブロマガ」というサービスの対象である有料のブログ記事の検索を行うものであるが,Xが提供するFC2ブログに含まれる有料のブログ記事を対象としたものであって,それ以外のウェブサイトの検索をする機能は提供されていない。
(2) 上記(1)に認定した事実によれば,Xは,平成28年4月当時,電磁的方法により行う映像面を介した役務の提供に当たり,その映像面に「ブロマガ」の文字からなる商標(以下「本件使用商標」という。)を表示して役務を提供していたものであるから,Xは要証期間内に本件使用商標を使用していたものと認められる。
2 商標の同一性について
(1)ア 本件商標は,前記第2の1(1)のとおり,ゴシック体風の「ブロマガ」の片仮名とセンチュリー体風の「BlogMaga」の欧文字を上下2段に配置した商標であり,上段と下段の間は文字の高さの半分程度の間隔があり,上段と下段のフォントの大きさは概ね同じで,上段より下段の方がやや横幅が大きく構成されている。
上段の「ブロマガ」部分からは,「ブロマガ」という称呼が生じる。また,下段の「BlogMaga」部分は,「Maga」が大文字の「M」で始まること,「dog」,「frog」のような「og」の語尾を持つ一般的な英語で「g」の発音を省略することはないこと,「Blog」はウェブログの省略語として浸透している「ブログ」を想起させることから,全体として「ブログマガ」という称呼が生じるものと認められる。そうすると,本件商標からは,「ブロマガブログマガ」という称呼が生じるといえる。
また,「ブロマガ」及び「BlogMaga」はいずれも造語であり,特段の観念を生じるとは認め難く,本件商標からは特段の観念を生じない。
イ 他方,本件使用商標は「ブロマガ」の文字のみからなるものであるから,本件商標とは使用する文字の一部が共通するものの,外観,観念及び称呼のいずれについても同一とはいえない。
ウ 以上に照らせば,本件使用商標について,本件商標の「書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標,平仮名,片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標,外観において同視される図形からなる商標その他の当該登録商標(本件商標)と社会通念上同一と認められる商標」ということはできない。
エ また,Xは,XのウェブサイトのURL中の「blomaga」の文字の使用について,本件商標と「社会通念上同一の商標」の「使用」に当たると主張するが,仮にURLにおける「blomaga」の使用が商標法50条1項所定の「商標」の「使用」に当たるとしても,「blomaga」は本件商標と外観,観念及び称呼のいずれにおいても同一とはいえないことは本件使用商標と同様であるから,本件商標と「blomaga」の文字からなる「商標」が「社会通念上同一」であるとは認められない。
(2) Xの主張について
ア Xは,欧文字の称呼については,特定の発音に固執せず,ある程度幅のある発音を念頭に,日本における一般的な認識や連想等を含めて,総合的に判断すべきであるとして,「HongKong」,「Pnig-Pong」,「Sign」,「Foreign」のように「g」を発音しない例がしばしば存在する一方,「King Kong」では「g」を発音するという風に日本で欧文字を読む際に「g」を発音する場合と発音しない場合があること,2語からなる外来語や固有名詞等の略語の生成において各語の冒頭の二拍ずつ取るのが基本であることから,本件商標の下段の「BlogMaga」部分は「ブロマガ」の称呼を生じると主張する。
しかし,Xが指摘する「g」を発音しない例は「ng」,「gn」という語尾を有するから本件商標の欧文字部分には妥当しないし,造語の欧文字である「BlogMaga」からX主張の略語が生じるとも認められない。
さらに,Xは,社会一般では「BlogMaga」の表記を「ブロマガ」と記載していることが多いと主張するが,Xがその立証のために提出した証拠(甲36~38)から,社会一般において「BlogMaga」を「ブロマガ」と表記していることは認められない。また,上記(1)アのとおりの本件商標の構成からは「ブロマガ」が「BlogMaga」の表音であるとは認め難い。
イ Xは,「BlogMaga」は,「Weblog」の略語である「Blog」と雑誌を意味する「Magazine」の略語である「Maga」が結合された造語であり,いろいろなブログを配信するサービスという観念が生じ,「ブログ」と「マガジン」の略語が結合した「ブロマガ」からも,いろいろなブログを配信するサービスという観念が生じるから,「BlogMaga」と「ブロマガ」から生じる観念は同一であると主張する。
しかし,本件商標の「ブロマガ」は4文字の造語で,同種同大のフォントが均等の間隔で配置されていることからすれば,「ブロ」の部分を分離して観念を想起し得るかは疑問であり,「ブロマガ」からブログとマガジンの略語の結合を想起するとはいえない。したがって,「BlogMaga」と「ブロマガ」がブログとマガジンの略語が結合したものとして理解され,同一の観念を生じさせるとは認められない。
Xは,「ブロマガ」と「BlogMaga」がいずれもXのサービスを示すものとして,同一の観念を生じさせるとも主張するが,Xのサービスが「BlogMaga」と認識されていたことを示す的確な証拠はないし,Xが需要者の間でXのサービスは「ブログマガ」とは認識されていなかったと主張していることからしても,Xの上記主張は採用できない。なお,Xは,「ブロマガ」はXのサービスを示すものとして周知であったとも主張するが,このことから,「BlogMaga」と「ブロマガ」から同一の称呼及び観念を生じることにはならない。
3 以上のとおり,取消対象役務について本件商標の商標登録を取り消すべきであるとした本件審決に誤りはなく,Xの請求は理由がないからこれを棄却する。
検 討
本判決に賛成。
ウェブサイトにて使用されている標章「ブロマガ」が登録商標(本件商標)と社会通念上同一ではないと判断された。
つまり、特許庁及び知財高裁のいずれにおいても、いわゆる二段書き登録商標の上段部分「ブロマガ」のみの使用は、当該登録商標の「書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標,平仮名,片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標,外観において同視される図形からなる商標その他の当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標」には該当しないため、当該登録の使用には該当しないと判断された。
判決の『本件商標からは,「ブロマガブログマガ」という称呼が生じる』といえるとの部分については疑問であるが、結論は妥当であろう。
本件商標の欧州文字部分が「BlogMaga」ではなく「BloMaga」であった場合に結論がどうなるか興味があるが、二段書き商標を有する商標権者はその使用に注意を要する。
以 上
2018年12月30日日曜日
清酒表示の商標権侵害「白砂青松」 長年他人の使用を知りながら権利行使しなかったことが権利の乱用に当たらないとされた事例
知財高裁判 H30・11・28 H30(ネ)10045号 商標権侵害差止等請求事件
原審東京地裁 H29年(ワ)9779号)
事実の概要
本件は,「白砂青松」の標準文字からなる原告商標の商標権(以下「本件商標権」という。)を有する被控訴人が,控訴人がその製造する日本酒(被告商品)に控訴人標章1ないし4を付して販売する行為が本件商標権の侵害に該当する旨主張して,控訴人に対し,商標法36条1項に基づき,控訴人各標章を付した日本酒を含む酒類の販売等の差止めを求めるとともに,同条2項に基づき,控訴人各標章を付した日本酒に関する宣伝用ポスター,包装等の廃棄及び控訴人のウェブサイトからの控訴人各標章の削除を求める事案である。
被控訴人は,原審において,控訴人が被告商品に被告標章を付して販売する行為が本件商標権の侵害に該当する旨主張して,控訴人に対し,同条1項に基づき,「白砂青松」の標章を付した日本酒を含む酒類の販売等の差止めを求めるとともに,同条2項に基づき,「白砂青松」の標章を付した日本酒に関する宣伝用ポスター,包装等の廃棄及び上記ウェブサイトからの「白砂青松」の標章の削除を求めたところ,原判決は,被控訴人の請求を全部認容した。
控訴人は,原判決を全部不服として控訴を提起し,被控訴人は,附帯控訴の方式により,当審において,差止めを求める対象を,被告標章を付した被告商品の販売等から控訴人各標章を付した被告商品の販売等に変更するなどの訴えの交換的変更をした。
なお,原判決は,被控訴人の上記訴えの交換的変更により,失効している。
認定事実
(1) 原告及び被告商品
ア 控訴人は,平成11年10月以降,被告商品(表側のラベルに控訴人標章1を,裏側のラベルに控訴人標章3を付した1.8リットル瓶の日本酒及び表側のラベルに控訴人標章2を,裏側のラベルに控訴人標章3を付した720ミリリットルの日本酒)を製造し,販売している。
また,控訴人は,被告商品を収める木箱に控訴人標章4を付している。
イ 原告は,平成18年5以降,原告商標を付した日本酒を販売している。
また,被控訴人は,同年4月19日,原告商標について,第30類「和菓子」及び第33類「日本酒,焼酎,果実酒」を指定商品として商標登録出願をし,平成19年1月12日,本件商標権の設定登録を受けた。
(2) 被告商品の広報及び販売状況等
ア 販売数
平成22年10月1日から平成27年9月30日までの被告商品の販売数は,720ミリリットル瓶について7900本,1.8リットル瓶について4144本である。
イ 販売地域
被告商品の販売地域は,茨城県外にも及んでいるが,その主な販売地域は,茨城県の日立市,水戸市周辺である。
ウ 販売価格
原告商品と被告商品の販売価格(現時点)は,720ミリリットル瓶では原告商品が1413円(税込)であるのに対し,被告商品は1994円(税込)であり,1.8リットル瓶では原告商品が2828円(税込)であるのに対し,被告商品は4104円(税込)である。
エ 被告商品の紹介実績等
被告商品は,平成11年10月10日付け茨城新聞,同月21日付け読売新聞,平成13年5月21日付け茨城新聞に取り上げられ,平成16年11月10日には新潮社「旅」12月号に取り上げられた。また,被告商品は,平成27年8月27日に発表された「The Wonder 500」プロジェクトにおいて日本を代表する商材500の一つに選定された。さらに,被告は,そのホームページ上に被告商品を掲載し,販売している。
(3) 本訴に至る経緯
ア 原告は,平成19年8月20日,被告にメールを送信し,原告が本件商標権を有している旨を指摘し,その後,同年10月にかけて原被告間において協議が行われたが,解決には至らなかった。
イ 原告は,平成28年2月10日付け通知書をもって,被告に対し,原告訴訟代理人を通じて,「白砂青松」の標章を付した被告商品の製造販売を中止するよう求める旨の通知をした。その後,原被告間で和解交渉が行われたが,合意に至らず,被告は,同年4月27日頃,原告に対し,訴訟での解決を図る旨を通知した。
ウ 被控訴人は,平成29年3月24日,東京地方裁判所に本件訴訟を提起した。その間の平成28年5月6日,控訴人は,控訴人標章2とほぼ同様の構成の商標について商標登録出願(商願2016-49449号)をした後,平成29年4月24日付けの拒絶査定を受けたため,同年8月18日付けで拒絶査定不服審判を請求した。
判 旨
控訴棄却。
本件の争点は、(1) 原告商標と控訴人各標章の類否(争点1),(2) 先使用権の有無(争点2),(3) 権利濫用の抗弁の成否である。本判決は,控訴人各標章はいずれも原告商標に類似する商標に当たるから,控訴人による控訴人各標章を付した被告商品の販売行為等は,本件商標権の侵害に該当するとし、請求を棄却した。
1 争点1(本件商標と控訴人各標章の類否)について
(1) 本件商標と控訴人標章1の類否について
ア 原告商標は,「白砂青松」の標準文字からなり,原告商標から「ハクサセイショウ」又は「ハクシャセイショウ」の称呼が生じ,「白い砂と青い松」(広辞苑第七版)という観念が生じ,海岸などの美しい風景を連想,想起させる。
イ(ア) 控訴人標章1は,別紙控訴人標章目録記載1のとおり,図形部分と,その上方に毛筆体で横書きした「大観」の文字部分及び「白砂青松」の文字部分とからなる結合商標である。
図形部分は,長方形の黒色の枠線の中に,背後に白い山が見える,白い砂浜に松林の続く海岸の風景画を図形化したものであり,図形部分の大きさは,控訴人標章1全体の約5分の4を占めている。
しかるところ,「大観」の文字部分及び「白砂青松」の文字部分は,図形部分と重なっていないこと,「大観」の文字部分は図形部分の長方形の黒色の枠線からやや離れた上方に配置されていることから,長方形の黒色の枠線で囲まれた図形部分と「大観」の文字部分及び「白砂青松」の文字部分は,明瞭に区別して認識することができる。
また,図形部分の左下部には毛筆体で縦書きした「大観」の署名及び落款印の印影が表記されており,図形部分は,横山大観作の「白砂青松」という作品名の絵画を図形化したものであることが認められるが(乙68ないし82),横山大観作の上記絵画が,原告商標の指定商品「日本酒」の需要者である一般消費者の間に広く認識されるに至っているものと認めるに足りる証拠はないことに照らすと,需要者の多くは,図形部分の風景画は,「白砂青松」の文字部分から連想,想起させる風景を描いたものと認識することはあっても,横山大観作の上記絵画であると認識するものと認めることはできないし,「大観」の文字部分及び「白砂青松」の文字部分は,図形部分の絵画の作者が横山大観であり,その作品名が「白砂青松」であることを表示するものとして図形部分と一体的な関係にあると認識するものと認めることもできない。
そうすると,図形部分と「大観」の文字部分及び「白砂青松」の文字部分は,分離して観察することが取引上不自然と思われるほど不可分的に結合しているものとは認められない。
次に,「大観」の文字部分及び「白砂青松」の文字部分から全体として「タイカンハクサセイショウ」又は「タイカンハクシャセイショウ」の称呼が生じるが,「大観」の文字部分は,控訴人標章1の上方左端に,「白砂青松」の部分は,「大観」の文字部分よりも大きな文字で控訴人標章1の上方中央にそれぞれ表示され,「大観」の文字部分は「白砂青松」の文字部分よりもやや上方に位置していること,「大観」の文字部分を構成する文字と「白砂青松」の文字部分を構成する文字は,字体が異なり,文字の間隔は「白砂青松」の文字部分の方が広いことに照らすと,「大観」の文字部分と「白砂青松」の文字部分は,明瞭に区別して認識することができるから,分離して観察することが取引上不自然と思われるほど不可分的に結合しているものとは認められない。
そして,「白砂青松」の文字部分は,控訴人標章1の上方中央に毛筆体の大きな文字で表示され,「白砂青松」の文字部分から「ハクサセイショウ」又は「ハクシャセイショウ」の称呼が自然に生じること,「白砂青松」の文字部分の下方に表示された図形部分は,需要者の多くによって「白砂青松」の文字部分から連想,想起させる風景を描いたものと認識されることからすると,控訴人標章1が原告商標の指定商品である日本酒に使用された場合には,控訴人標章1の構成中の「白砂青松」の文字部分は,取引者,需要者に対し,被告商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる。
以上によれば,控訴人標章1から「白砂青松」の文字部分を要部として抽出し,これと原告商標とを比較して商標そのものの類否を判断することも,許されるというべきである。
(イ) これに対し控訴人は,①控訴人標章1は,被告商品の瓶のラベルに使用されているところ,需要者が店頭で日本酒を購入する場合,日本酒の瓶のラベルにどのような絵柄や文字が記載されているかを確認して商品を識別するから,ラベルに表示されている文字や絵柄は,全体として自他商品識別機能を有しており,しかも,被告商品の瓶のラベルに占める上記絵画部分は,非常に大きいこと,②「大観 白砂青松」の文字部分は,横山大観の自筆のものであり,この文字部分から,通常,横山大観が描いた「白砂青松」という作品名の絵画を連想させるところ,絵画部分は横山大観作の「白砂青松」という作品名の絵画であることからすれば,上記文字部分と上記絵画部分は,分離して観察することが取引上不自然と思われるほど不可分的に結合しているといえるから,控訴人標章1から「白砂青松」の文字部分を抽出し,これと原告商標とを比較して商標そのものの類否を判断することは許されない旨主張する。
しかしながら,控訴人標章1を構成する図形部分と「大観」の文字部分及び「白砂青松」の文字部分とを明瞭に区別して認識することができることは,前記(ア)認定のとおりである。
また,上記①の点については,日本酒を購入する場合,瓶のラベルにどのような絵柄や文字が記載されているかを確認することがあるからといって,一般に,ラベルに表示されている文字や絵柄が全体としてのみ自他商品識別機能を有しているということはできない。
さらに,上記②の点については,仮に控訴人標章1の「大観」の文字部分及び「白砂青松」の文字部分が横山大観の自筆のものであったとしても,そのことが需要者である一般の消費者の間に広く認識されるに至っているものと認めるに足りる証拠はない。また,前記(ア)認定のとおり,需要者の多くは,控訴人標章1の図形部分から,その図形部分の風景画が横山大観作の「白砂青松」という作品名の絵画であると認識するものと認めることはできない
したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。
(ウ) 次に,控訴人は,「大観」の文字には,横山大観という人物を表す意味があること,「白砂青松」の文字には,横山大観が描いた絵画の作品名としての意味があることに照らすと,上記各文字を並べた「大観白砂青松」の文字部分は,横山大観が描いた「白砂青松」という作品名の絵画という意味となり,「大観」の文字部分と「白砂青松」の文字部分は,分離して観察することが取引上不自然と思われるほど不可分的に結合しているといえるから,控訴人標章1から「白砂青松」の文字部分を抽出し,これと原告商標とを比較して商標そのものの類否を判断することは許されない旨主張する。
しかしながら,控訴人標章1を構成する「大観」の文字部分と「白砂青松」の文字部分とを明瞭に区別して認識することができることは,前記(ア)認定のとおりである。
また,前記(ア)認定のとおり,需要者の多くは,控訴人標章1の図形部分から,その図形部分の風景画が横山大観作の「白砂青松」という作品名の絵画であると認識するものと認めることはできない。
したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。
ウ 原告商標と控訴人標章1の要部である「白砂青松」の文字部分を対比すると,原告商標は,「白砂青松」の標準文字からなるのに対し,控訴人標章1の「白砂青松」の文字部分は,毛筆体の「白砂青松」の文字からなり,字体は異なるが,構成する文字は同一であるあることから,外観において類似するものと認められる。また,原告商標と控訴人標章1の「白砂青松」の文字部分は,いずれも「ハクサセイショウ」又は「ハクシャセイショウ」の称呼が生じる点及び「白い砂と青い松」という観念が生じ,海岸などの美しい風景を連想,想起させる点において同一である。
したがって,原告商標と控訴人標章1の要部である「白砂青松」の文字部分は,称呼及び観念が同一であり,外観は,同一ではないが,類似するものといえる。
そうすると,原告商標及び控訴人標章1が原告商標の指定商品である日本酒に使用された場合には,その商品の出所について誤認混同を生ずるおそれがあるものといえるから,控訴人標章1は全体として原告商標に類似する商標であるものと認められる。
(2) 原告商標と控訴人標章2の類否について
控訴人標章2は,別紙控訴人標章目録記載2のとおり,図形部分と,その上方に毛筆体で横書きした「大観」の文字部分及び「白砂青松」の文字部分とからなる結合商標である。控訴人標章2は,「大観」の文字部分と「白砂青松」の文字部分が並んで表示され,両文字部分の間には1文字分の間隔があるが,それ以外の構成は,控訴人標章1とほぼ同一である。
したがって,前記(1)イで説示したのと同様の理由により,控訴人標章2から「白砂青松」の文字部分を要部として抽出し,これと原告商標とを比較して商標そのものの類否を判断することも,許されるというべきである。
そして,前記(1)ウで説示したのと同様の理由により,原告商標と控訴人標章2の要部である「白砂青松」の文字部分は,称呼及び観念が同一であり,外観は,同一ではないが,類似することからすると,原告商標及び控訴人標章2が原告商標の指定商品である日本酒に使用された場合には,その商品の出所について誤認混同を生ずるおそれがあるものといえるから,控訴人標章2は全体として原告商標に類似する商標であるものと認められる。
(3) 原告商標と控訴人標章3の類否について
ア(ア) 控訴人標章3は,別紙控訴人標章目録記載3のとおり,毛筆体で横書きした「大観」の文字部分と「白砂青松」の文字部分とからなる結合商標である。
「大観」の文字部分は,控訴人標章3の左端に,「白砂青松」の文字部分は,控訴人標章3の中央にそれぞれ表示されていること,「大観」の文字部分と「白砂青松」の文字部分との間には1文字分の間隔があること,「大観」の文字部分を構成する文字と「白砂青松」の文字部分を構成する文字は,字体が異なり,文字の間隔は「白砂青松」の文字部分の方が広いことに照らすと,「大観」の文字部分と「白砂青松」の文字部分は,明瞭に区別して認識することができるから,分離して観察することが取引上不自然と思われるほど不可分的に結合しているものとは認められない。
そして,「白砂青松」の文字部分は,控訴人標章3の中央の目立つ位置に表示され,「白砂青松」の文字部分から「ハクサセイショウ」又は「ハクシャセイショウ」の称呼が自然に生じることからすると,控訴人標章3が原告商標の指定商品である日本酒に使用された場合には,控訴人標章3の構成中の「白砂青松」の文字部分は,取引者,需要者に対し,被告商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる。
以上によれば,控訴人標章3から「白砂青松」の文字部分を要部として抽出し,これと原告商標とを比較して商標そのものの類否を判断することも,許されるというべきである。
(イ) これに対し控訴人は,「大観」の文字には,横山大観という人物を表す意味があること,「白砂青松」の文字には,横山大観が描いた絵画の作品名としての意味があることに照らすと,上記各文字を並べた「大観 白砂青松」の文字部分は,横山大観が描いた「白砂青松」という作品名の絵画という意味となり,「大観」の文字部分と「白砂青松」の文字部分は,分離して観察することが取引上不自然と思われるほど不可分的に結合しているといえるから,控訴人標章3から「白砂青松」の文字部分を抽出し,これと原告商標とを比較して商標そのものの類否を判断することは許されない旨主張する。
しかしながら,前記(1)イ(ウ)で説示したとおり,控訴人の上記主張は採用することができない。
イ 前記(1)ウで説示したのと同様の理由により,原告商標と控訴人標章3の要部である「白砂青松」の文字部分は,称呼及び観念が同一であり,外観は,同一ではないが,類似することからすると,原告商標及び控訴人標章3が原告商標の指定商品である日本酒に使用された場合には,その商品の出所について誤認混同を生ずるおそれがあるものといえるから,控訴人標章3は全体として原告商標に類似する商標であるものと認められる。
(4) 原告商標と控訴人標章4の類否について
ア(ア) 控訴人標章4は,別紙控訴人標章目録記載4のとおり,毛筆体で縦書きした「大観」の文字部分と「白砂青松」の文字部分とからなる結合商標である。
「大観」の文字部分は,控訴人標章4の上方右端に表示され,「白砂青松」の文字部分は,「大観」の文字部分よりもかなり大きな文字で控訴人標章4の中央に表示されていること,「大観」の文字部分を構成する文字と「白砂青松」の文字部分を構成する文字は,字体が異なることに照らすと,「大観」の文字部分と「白砂青松」の文字部分は,明瞭に区別して認識することができるから,分離して観察することが取引上不自然と思われるほど不可分的に結合しているものとは認められない。
そして,「白砂青松」の文字部分は,控訴人標章4の中央の目立つ位置に「大観」の文字部分よりもかなり大きな文字で表示され,「白砂青松」の文字部分から「ハクサセイショウ」又は「ハクシャセイショウ」の称呼が自然に生じることからすると,控訴人標章4が原告商標の指定商品である日本酒に使用された場合には,控訴人標章4の構成中の「白砂青松」の文字部分は,取引者,需要者に対し,被告商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる。
以上によれば,控訴人標章4から「白砂青松」の文字部分を要部として抽出し,これと原告商標とを比較して商標そのものの類否を判断することも,許されるというべきである。
(イ) これに対し控訴人は,「大観」の文字には,横山大観という人物を表す意味があること,「白砂青松」の文字には,横山大観が描いた絵画の作品名としての意味があることに照らすと,上記各文字を並べた「大観 白砂青松」の文字部分は,横山大観が描いた「白砂青松」という作品名の絵画という意味となり,「大観」の文字部分と「白砂青松」の文字部分は,分離して観察することが取引上不自然と思われるほど不可分的に結合しているといえるから,控訴人標章4から「白砂青松」の文字部分を抽出し,これと原告商標とを比較して商標そのものの類否を判断することは許されない旨主張する。
しかしながら,前記(1)イ(ウ)で説示したとおり,控訴人の上記主張は採用することができない。
イ 前記(1)ウで説示したのと同様の理由により,原告商標と控訴人標章4の要部である「白砂青松」の文字部分は,称呼及び観念が同一であり,また,横書きと縦書きの違い及び字体の違いがあるが,構成する文字が「白砂青松」の漢字4文字である点で共通することから,外観は,類似するといえる。
そうすると,原告商標及び控訴人標章4が原告商標の指定商品である日本酒に使用された場合には,その商品の出所について誤認混同を生ずるおそれがあるものといえるから,控訴人標章4は全体として原告商標に類似する商標であるものと認められる。
(5) 小括
以上のとおり,控訴人各標章はいずれも原告商標に類似する商標であるものと認められる。
2 争点2(先使用権の有無)について
被告は,原告商標の登録出願時において,控訴人各標章は被告の商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたのであるから,被告は控訴人各標章について先使用権を有すると主張する。
(1) しかし,被告商品の販売数については,上記1(2)アのとおり,取引記録の残っている平成22年10月1日から平成27年9月30日までの5年間で720ミリリットル瓶について年間平均1580本,1.8リットル瓶について829本であると認められ,原告商標の登録出願時の販売数もほぼ同様であったと推認することが相当である。同販売数は,控訴人各標章が需要者の間で周知であったと認めるに足りるに十分なものということはできない。
また,原告登録の出願時の販売地域は主として茨城県内であったと認められるのであり,同時点において茨城県及びその周辺地域においてその市場占有率が特に高かったという事情や同地域の飲食店等の多くで被告商品が提供されていたことをうかがわせる証拠も存在しない。
さらに,被告は,その取引先に対して取引実績に関する照会をしているが (乙39),証拠として提出されたその回答(乙42~51)は10件にとどまり,その中には被告商品の購入がない又は購入数が確認できないとするものも少なからず含まれるのであり,同回答は,控訴人各標章が原告商標の登録出願時に周知であったことを裏付けるに足りるものではない。
(2) 被告は,新聞や雑誌に被告商品が紹介されたことなどをもって,控訴人各標章は原告商標の登録出願時に周知であったと主張する。
しかし, 被告商品の販売開始(平成11年10月)から原告商標の登録出願時(平成18年4月)までの間に被告商品が新聞,雑誌等で取り上げられたのは合計4回にすぎず,これをもって,原告商標の登録出願時において被告標章が周知であったと認めることはできない。
また,被告は,そのホームページ上に被告商品を掲載し,広報を行ったとも主張するが,前記のとおり,被告がホームページを開設した時期を客観的に示す証拠はなく,仮に,その開始時期が原告商標の登録出願前であったとしても,ホームページ上に商品を掲載したことから直ちに控訴人各標章が同時点において周知であったと認めることはできない。
(3) 以上によれば,控訴人各標章は,原告商標の登録出願時において,茨城県及びその周辺地域の需要者の間で広く知られていたということはできない。したがって,先使用権が認められるためには一定地域内で広く知られていれば足りるとの被告の主張を前提としても,被告が先使用権を有すると認めることはできない。
3 争点3(権利濫用の抗弁の成否)について
被告は,原告が,原告商標の登録から約10年以上の間,控訴人各標章が使用されていることを知りながら格別の措置を講じなかったにもかかわらず,平成28年になってその権利行使をすることは権利濫用に当たると主張する。
しかし,商標権を行使するかどうかは権利者の判断に委ねられる事柄であり,前記1(3)記載の認定事実に照らしても,原告が被告に対し控訴人各標章の使用を容認していたにもかかわらず取引上の信義則に反して権利行使に及んだなどの特段の事情は認められない。
また,原告が原告商標を付して原告商品の販売を継続していることは,前記20 のとおりであり,原告が標準文字ではない字体の文字を付して原告商品を販売していることから原告の権利が保護に値しないということもできない。
さらに,被告は,原告が誤認混同を惹起する意図を有していた,虚偽の事実を需要者等に告知,流布したなどと主張するが,いずれも理由がない。
以上のとおり,控訴人各標章を付して被告が被告商品の販売等を行っていること25 に対し原告が原告商標に基づく差止請求をすることが権利濫用に当たるということはできない。
したがって,被告の権利濫用の主張は理由がない。
以上によれば,控訴人による控訴人各標章をラベル又は木箱に付した被告商品の販売行為等は,被控訴人の本件商標権の侵害に該当するものと認められる。
検 討
本判決に賛成。
コメント
原告(被控訴人)は茨城県那珂郡で酒店を営んでいる商標権者河野雅史氏、被告(控訴人)は茨城県日立市で酒造業を営んでいる森島酒造株式会社である。
森島酒造(株)は1999年10月以降「白砂青松」を瓶のラベルに付して日本酒を販売していたが、商標登録出願していなかった。一方、河野商店は2006年から清酒「白砂青松」の販売を開始し、商標登録出願をし、商標登録を受けていた。
森島酒造(株)は、商標の非類似の他、自らに先使用権があること及び河野商店が登録後10年以上経過後に権利主張するのは権利の乱用であることを主張したが、いずれも認められなかった。
森島酒造(株)は「白砂青松」の使用開始時に商標登録出願を怠ったために永年に亘って育ててきたブランドを失ったという(商標登録の重要性を示す)事例である。
以 上
2017年4月9日日曜日
基生会、春に集まる。
勝どきのイタリアレストランです。Vialetto(ヴィアレット)。
7名が集まりました。今回来られなかった1人は心筋梗塞を煩いカテーテル治療を受けたということです。このような世代です。
勝どきのイタリアレストランです。Vialetto(ヴィアレット)。
7名が集まりました。今回来られなかった1人は心筋梗塞を煩いカテーテル治療を受けたということです。このような世代です。
2017年3月7日火曜日
商標権の移転が利益相反にあたる場合
やっと解ったような気がします。
「利益相反」とは、取締役と会社との利害が相反することをいいます。具体的には、譲渡人と譲受人の代表取締役が同一人の場合です。
「利益相反行為」に該当する場合には、商標権の移転登録の申請の際に譲渡証書に加えて取締役議事録を提出する必要があります。取締役会を設置していない会社は、株主総会において承認を得る必要があります。さらに、取締役会を設置していない会社であることを証明する書類の提出も必要です。具体的には、登記事項証明書(「履歴事項全部証明書」・「現在事項全部証明書」など)。登記事項証明書は、取締役会又は株主総会の開催日以後に認証されたものであることが必要です。
なお、会社法では、取締役についての規定であるが、特許庁の実務では、代表取締役の表記がある者について適用している。日本の会社法が適用されない外国人については、たとえ代表取締役であろうと適用されません。
譲渡対価が無償の場合、譲渡人の取締役会(株主総会)議事録の提出だけでよく、譲受人には必要とされません。無償だから、譲受人に不利益とはならないからです。
譲渡の対価が有償の(譲渡証書に「無償で」と記載していない)場合、譲渡人のみならず譲受人の取締役会(株主総会)議事録の提出が必要です。
「利益相反」とは、取締役と会社との利害が相反することをいいます。具体的には、譲渡人と譲受人の代表取締役が同一人の場合です。
「利益相反行為」に該当する場合には、商標権の移転登録の申請の際に譲渡証書に加えて取締役議事録を提出する必要があります。取締役会を設置していない会社は、株主総会において承認を得る必要があります。さらに、取締役会を設置していない会社であることを証明する書類の提出も必要です。具体的には、登記事項証明書(「履歴事項全部証明書」・「現在事項全部証明書」など)。登記事項証明書は、取締役会又は株主総会の開催日以後に認証されたものであることが必要です。
なお、会社法では、取締役についての規定であるが、特許庁の実務では、代表取締役の表記がある者について適用している。日本の会社法が適用されない外国人については、たとえ代表取締役であろうと適用されません。
譲渡対価が無償の場合、譲渡人の取締役会(株主総会)議事録の提出だけでよく、譲受人には必要とされません。無償だから、譲受人に不利益とはならないからです。
譲渡の対価が有償の(譲渡証書に「無償で」と記載していない)場合、譲渡人のみならず譲受人の取締役会(株主総会)議事録の提出が必要です。
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